T.Hidaka: 2012年4月アーカイブ

 ユニ・チャームと日立が共同開発

 

 夜、なんどもトイレに立つという人は少なくない。頻尿は健常者でも困りもの、まして高齢者や要介護者にとっては大変な負荷になる。ベッドから起き上がってトイレに行くこと自体が重労働だし、転倒して負傷し、寝たきりになることもある。

 

 私事になるが、元気だった母はトイレから出たあと廊下で転倒して後頭部を強打し、脳挫傷を起こして呆気なく亡くなった。79歳の誕生日を4日後に迎えるはずだった。たかがトイレ、ではないのだ。

 

 高齢者や要介護者のトイレ対策に利用されているのが紙おむつ。トイレに立つ手間が省けるので便利だが、これにも問題はある。紙おむつはパッドに尿を溜め込むので、利用者が動いて少しでも圧力が加わるとパッド表面に尿が染み出して不快感をもよおすし、肌荒れを起こすこともある。

 

 こうした問題を解消するべく7年の歳月をかけて「尿吸引ロボ」を開発したのが、ほかならぬ紙おむつメーカーのユニ・チャームだ。製造を委託する日立製作所と合弁でユニ・チャームヒューマンケアという会社も設立し、20095月から「Humany(ヒューマニー)」の名称で提供を開始した。

 

 

humany.jpg 

       ◎尿吸引ロボ「ヒューマニー」(本体とパッド)


尿を吸引してパッド表面は常にさらさら

 

 「ヒューマニー」は紙おむつと同じように利用者の下腹部に装着して利用する。違いは、パッドにセンサーがついており、利用者の排尿を検知するとパッドからチューブで尿を吸引し、タンクに溜め込むことだ。

 

 この結果、紙おむつと違ってパッド表面を常にさらさらの状態に保つことができ、濡れたパッドを身に着けている不快感をなくし、肌荒れも防げるというわけである。

 

 ちなみに、吸引量は毎秒25cc。人の1回あたりの平均的な排尿量は約200ccなので10秒ほどで吸引してしまうが、その後も約90秒間作動し続け、パッド表面の尿量が0.5ccほどになった段階で次の排尿検知まで待機状態になる。

 

 尿吸引パッドとヒューマニー本体とをつなぐチューブの長さは2m。ポンプの能力を一定に保つため、あえて長さは調節できないようにしてある。

 

利便性を追求したさまざまな工夫

 

 ヒューマニーは利用者の利便性を高めるためのさまざまな工夫を凝らしている。

 

 例えば電源。コンセントにコードを繋いで使うのが基本だが、近くにコンセントがなくても使えるよう、内蔵バッテリーも別売している。尿とりパッドにセンサーを取り付ける際も、一定の方向でしかセットできない形状になっているし、何かトラブルがあるとアラームで知らせる。

 

 衛生的な状態を保てるよう、本体の中に入っているポンプ以外はすべて外して漬けおき洗いができる。全部色分けしてあるので、元に戻す場合も間違えることはない。また衛生面から専用パッドは使い捨て。唯一、交換が必要なのは排気フィルターで、ヒューマニーを毎日使った場合、6ヶ月程度で交換する仕組みだ。

 

 部品にはシリコンゴムを使っているので、通常のゴムと違って耐久性が高いのも魅力だ。耐用年数は6年である。

 

 タンクの容量は1000cc。これで約9割の利用者はカバーできるためだが、尿の量が多い利用者のために1200ccまで吸引できるタンクも用意している。

 

夜間の排せつケアに絶大な効果

 

 ヒューマニーの効果をもっとも実感できるのは夜間の排せつケア。ユニ・チャームヒューマンケアの幡野昭信さんは次のように語る。

 

 「紙おむつで使用する尿とりパッドは、昼間用は比較的小さなタイプですが夜間用は大判化します。大きくなると吸収する量は増えますが、濡れる面積も広がる。ヒューマニーはそうしたことないので不快感も肌トラブルもなく、高い安眠効果が得られます」

 

 実際、多くの利用者が排せつケアの改善効果の高さを指摘している。例えば、

 

夜のおむつ交換が不要になった。

 ヒューマニーを導入する以前は夜間に1.8回(利用者150人平均)、交換が必要だった

 のが、導入後は0回になった。

夜のトイレ移乗がなくなった。

 導入前は3.5回(38人平均)必要だったのが、導入後は0回になった。

夜間訪問サービスが激減した。

 サービス利用者が13人から7人に46%削減した。

 

 ――といった具合である。夜間の訪問介護サービスを利用しなくて済むため、費用面でも削減効果が高いことは言うまでもない。

 

月額約800円で利用可能に


 ヒューマニーを使ってみたいという人に朗報がある。

 

 じつはこれまで、ヒューマニーの価格は本体だけで10万円(非課税)していた。ただし、ケアマネジャーにケアプランの中でヒューマニーの使用を明示してもらうことで介護保険の特定福祉用具購入助成制度が使えたが、それでも利用者は1万円を負担する必要があった(10万円で購入し、2ヵ月後、9万円が償還)。

 

 それが20124月の介護保険改定でレンタルが可能になり、これまでとは格段に安い費用で利用できるようになったのだ。

 

 具体的には、テープやタンクは購入助成のままだが、それらを取り除いた本体は貸与種目となる。試算では、月額800円程度の自己負担で利用できるようになった。レンタルは数ヶ月の短期でも利用可能なので、「眠れない排せつケア生活の解消」のためにも、試してみる価値は大いにありそうだ。

                                     

問い合わせ先□

ユニ・チャームヒューマンケア株式会社

 Tel03-3449-3596 Fax03-5798-9835

 ホームページ:http://www.humany.jp


  CYBERDYNE社のHAL――と聞いて介護ロボットであることが分かる人はまだ少ないだろう。2010年秋に発売されたこのロボットは、体に装着することによって身体機能を拡張したり、増幅することができる世界初のサイボーグ型ロボットだ。

 

 

hal3-733.jpg  

 メカニズムはこうである。人が筋肉を動かそうとしたとき、脳から運動ニューロンを介して筋肉に神経信号が伝わり、筋骨格系が作動するが、その際、微弱な生体電位信号が皮膚表面で検出される。この信号を、装着者の皮膚表面に貼り付けたセンサーで読み取り、パワーユニットを制御して装着者の筋肉の動きと一体的に関節を動かし、動作支援をするのがHALというわけだ。

 

 初めてHALを見たとき、「おお、ついにここまできたか!」と嬉しくなったものだ。なぜかというと、私は2003年に『トコトンやさしいパーソナルロボットの本』(日刊工業新聞社刊)という本を出していて、それ以来、少々ロボットに肩入れしているからである(ちょっと自慢話をさせてもらうと、この本は静岡大学工学部のサブテキストとして推奨されていたこともある)。

 

 それはさておき、この本ではセコムの「マイスプーン」という食事支援ロボットを紹介したが、もっと介護分野でロボットが活かせるのではないかと思ってきた。それがHALの登場で、ついに! という感を抱いたのだ。

 

自力で歩けなかった人が歩けるように

 

 感極まって(というと少々大げさだが)、茨城県つくば市のCYBERDYNE社を訪ね、第一営業部長の久野孝稔(くの・たかとし)さんにいろいろ訊き、デモも見せてもらった。

 

 ちょっとロボコップ的な感じもしたが、これならいけそうだと感じた。ちなみに同社の代表取締役CEOである山海嘉之(さんかい・よしゆき)さんはHALの開発者で、筑波大学教授。どこかイラストレーターの山藤章二を思わせる風貌で、脳神経科学や行動科学、ロボット工学、IT(情報技術)、感性工学などを融合させた「サイバニクス」の提唱者である。

 

 HAL20123月現在、全国160の介護施設で約270台が稼動している。皮膚にセンサーを貼り付けるため、慣れないと装着に少し手間ったりするようだが、自力で歩けなかった人が歩けるようになったりするなど、利用者の反応はおおむね良好だ。

 

ケアロボの時代

 

 ところで介護ロボットは、HALのように上肢や下肢の動きをサポートするタイプだけでなく、あざらし型ロボット「パロ」のようなメンタル面をサポートするタイプもあるし、「ロボリア」のような見守タイプもある。

 

 そこで私はこれらをまとめて「ケアロボット」(略して、ケアロボ)と呼んでいる。なぜ介護ロボット」ではなく「ケアロボ」かというと、ロボットは要支援者や要介護者を対象とした介護サポートだけでなく、広範に人のケアに役立つと思うからである。

 

 ロボットというと、無機質、機械的、非人間的、融通がきかない、といったイメージを抱く人が多いだろう。だがいま、マニュアルに忠実なだけで、こちらの要望に臨機応変に対応してくれない、融通のきかない人が多くはないか。飲食店やコンビニの従業員に顕著だが、だったらロボットでもいいんじゃないかと、私などは思ってしまう。

 

 もっとも、私がケアロボにこだわるのは、そういう消去法的な考え方からではない。ことはもっと深刻かつ切実だ。人口減少と少子高齢化が進み、労働人口が減っていく一方で、要支援者や要介護者が増加する日本の危機的状況を打破するためには、ケアロボは必要不可欠と思うからである。

 

 ケアロボが役立つのは要支援者や要介護者に対してだけではない。年齢や性別を超えて、短期的長期的にメンタルケアや見守りが必要な人たちにとっても、ケアロボは有効だと考える。

 

 ではいったいどんなケアロボがあり、具体的にどのように役立ち、技術的にいまどこまできているのか、そして将来展望はどうなのかといったことを、これから見ていくことにする。乞う、ご期待!

 

HALに関する情報は――

 

CYBERDYNE株式会社

 Tel029-855-3189 Fax029-855-3181

 Webhttp://www.cyberdyne.jp

 

大和ハウス工業株式会社ロボット事業推進室

 Tel0120-934-576(フリーコール)

 Webhttp://www.daiwahouse.co.jp/robot/







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